昼のミミズクのとぼけ顔

これも『猿蓑』の句。

木菟やおもひ切たる昼の面  芥境

ミミズクヤオモイキッタルヒルノツラ。
「おもひ切たる」は、悟りすました様ともいえるし、そんな境地は通りこしてただボケてるだけともいえるが、どちらかといえば後者に近く感じる。夜は猛禽のミミズクなのに、昼間はなんと緩んでいることよ。

ミヽづくハ眠る處をさゝれけり  半残

ミミズクハネムルトコロヲササレケリ。
「さゝれけり」は鳥もち竿で刺されてしまったの意。ぼんやりしているものだから、あっさり捕らえられてしまった、と。
この句のペーソスはミミズクを主体にしたところにあり、かりに「木菟の眠る処をさしにけり」としてみれば違いがわかる、と荻野清『猿蓑俳句研究』の説。

両句はいずれも『猿蓑』の冬の部にあり、ミミズクが冬の季語として働いているが、『猿蓑』が編まれた元禄年間にはまだ季語としての地位は不安定で、冬の季語として一般化するのは天明以降という。これも『猿蓑俳句研究』の説。元禄から天明までは90年ほど。