2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

我がせこが来べき宵なり、ささがにの…

歌舞伎や人形浄瑠璃の「我がせこが来べき宵なり、ささがにの──」は、蜘蛛の妖怪の出現を告げるフレーズ。オリジナルは『日本書紀』允恭紀にある衣通郎姫(そとおりのいらつめ)の歌。 我が夫子(せこ)が 来べき夕(よい)なり ささがねの 蜘蛛の行ひ 是夕(…

謡曲「土蜘蛛」における胡蝶の不自然、およびその解決

病で伏せている源頼光のために、侍女の胡蝶が典薬頭からもらった薬を館に持ち帰る。 その夜、僧形の者が頼光の枕もとにあらわれて、見舞いを述べる。 頼光が怪しむと、僧は、 「そなたの病気は蜘蛛のせいではないか」 と言って蜘蛛の糸を投げつけ、頼光を絞…

善知鳥

「善知」は海鳥の名前。「うとう」と読む。 「善知鳥」とも書き、「うとう」または「うとうどり」と読む。 鵜とは無関係で、発音は「ウト・ウ」ではなく「ウトー」。 鳴き声は「うとうやすかた」。 親鳥が子をさがして「うとう」と鳴くと、子は「やすかた」…

「伊賀寿太郎」の読み

伊賀寿太郎の姓名の区切りは、伊賀|寿太郎か、伊賀寿|太郎か。 歴史物語の『前太平記』では「伊賀寿」と略称してるから、これが姓の可能性がある。 鶴屋南北の『四天王櫓礎』では、ト書きに「寿太郎」とも「伊賀寿」ともあって決めかねる。登場人物の台詞で…

『今昔物語』の良門

平将門の遺児とされ江戸の芝居や小説で活躍する平良門(よしかど)はいつごろから知られた人物か。 今は昔、陸奥の国の国府に小松寺という寺あり。中ごろ一人の沙弥ありてその寺に住す。名をば蔵念という。これは平の将門が孫、良門が子なり。 ──『今昔物語…

謡曲「大江山」の一人武者

一人武者(独り武者)とは他にぬきんでた強い武者を意味し、人物の形容または代名詞的に使われる言葉なのだが、謡曲の「大江山」に出てくる一人武者には名前がない。 頼光「その主々は、頼光、保昌 供「貞光、季武、綱、金時 一人武者「また名を得たる一人武…

じつに「じつは」な『戻橋背御摂』

都の守護をになう源頼光の館に上使がやってくる。 頼光は病気で臥せっているため、かわりに奥方の園生の前が応対する。 上使は三田源太広綱と名乗り、頼光が所持する名剣、蜘蛛切りと鬼切りの二刀を差し出せと求める。刀は何者かに盗まれて館にはないのだが…