俳諧

いそがしや沖の時雨の真帆片帆

これも『猿蓑』巻之一から。 真帆(まほ)は順風を受けて走るときの帆の張り方、片帆(かたほ)は横から風を受けて進むときの傾けた張り方。 ふいの時雨(しぐれ)に見舞われた舟があわてている。上五の「いそがしや」は孤舟よりも舟群を思わせ、そう解釈し…

芭蕉が読み違えた其角の秀句

これも『猿蓑』の句。明治の俳人・内藤鳴雪が「其角集中第一等の傑作」と評したという。 この木戸や鎖のさゝれて冬の月 其角 「鎖」は「錠」と同じ。したがって中七の読みは、ジョウノササレテ。 其角はこの句の下五を「冬の月」とするか「霜の月」かで決め…

昼のミミズクのとぼけ顔

これも『猿蓑』の句。 木菟やおもひ切たる昼の面 芥境 ミミズクヤオモイキッタルヒルノツラ。 「おもひ切たる」は、悟りすました様ともいえるし、そんな境地は通りこしてただボケてるだけともいえるが、どちらかといえば後者に近く感じる。夜は猛禽のミミズ…

あれ聞けと時雨来る夜の鐘の声

「あれ聞け」と誰が言ってるのかという宿題。 あれこれ考えたが結論だけ。 この句は語調のうえで次の箇所に切断がある。 あれ聞けと|時雨来る夜の鐘の声 けれどもこう切ったのでは、「あれ聞け」の発話者があいかわらず判然としない。そこで、次の箇所に意…

あれ聞けと…

あれ聞けと時雨来る夜の鐘の聲 『猿蓑』にある其角の句だけど、意味がわからない。 「あれ」は代名詞なのか、感嘆詞なのか。「聞け」と誰が(あるいは何者が)言ってるのか。聞くべき対象は鐘の音なのか。時雨にだって音はある。だから時雨のことではないの…